晩夏の風景

 

夏が過ぎゆくのだろう。

昼間の残暑とはうってかわって朝方は少し肌寒い季節になりつつある1日。

日本の南にある地方都市の商店街を歩きながら考えた。

なにをどう考えたかわからないが、これから秋に向かうこころ持ちとあいまって少し重苦しい心情なのだろうか。

歩いているのだがどこかおぼつかない。なにがと言うことではないがどこか落ち着かない。

しかし歩いている。

地方都市とはいえ商店街を歩く人々はきれいに着飾りいつもとは違う自分がいることを楽しんでいるようだ。

いろいろな人がいていいんだなどと自分に言い聞かせ歩いた。

ふと見ると交差点に座りこんだ年のころ13歳ぐらいの女の子がいる。

いまどきの女の子には似つかない薄汚れた服をきている。

風呂敷を胸の前にかかえ交差点の向かい側の一点を見つめている。

これだけでもここの風景とはそぐわない、どこか日常とは違う風景を見ている自分がいる。

やはり日常とは違う自分なのか。

が次の瞬間、交差点の信号が変わったと同時に女の子は風呂敷を広げ大きく背伸びをして手を伸ばし風呂敷を大きく振りだした。

なんだ、どうした、と次の瞬間、私は気づいた。その薄汚れた服を着た女の子は迎えに来たのであろうこれもまた薄汚れた服を着た父親らしい男性を見て笑顔を見せた。

にぎやかな商店街には似つかわしくない薄汚れた服を着た2人は港の方向に歩いていった。

そうか歩くんだ。そうだ歩くんだ。

なにやらいいようのない重苦しさが一瞬ではあるが、確かに晴れわたる心持ちがした。

何事もなかったようににぎやかな商店街はいつもの顔を見せている。

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