1982年 春 桜が咲き、世間は華やいだ!

四季の移ろいは、私なんぞが考えるよりも確実に移り変わりまた新しい季節となる。

寒い東京の冬が過ぎる。

どういう訳かまた春が来る。

この四季の変化が日本の最大かつ、最高の価値かもしれない。

1982年の春は、吉祥寺のアパートにいた。

同じ歳の友人や故郷の仲間は大学を卒業して、新入社員としてそれぞれの職場で働き始めた。

まだバブルではなく、就職に苦労した友人もいたが、4月も末には全員が社会人となった。

そうか、そうなんだ、働き、稼ぐ、この当たり前のことが羨ましく思えた。

私は「中小企業論」のゼミに入った。

2年生のとき、清成先生の「中小企業論」の授業が好きだったからだ。

   清成教授

このゼミは人気のゼミで、先輩達の多くは有名金融機関や証券会社に就職していた。

私は進路などを考えたこともなく、ただ清成先生が好きで「清成ゼミ」に入った。

実はこの人気のゼミは、入会希望者が多く試験と面接があった。

他のメンバーはよく勉強して、適格に面接にも答えられる力量をもっていたのだと思う。

他方私と言えば、経済や経営の本などほとんど読まないし、2年までは大学紛争

(この辺は今の方々には理解し難いと思う)

などの影響で期末の試験がなくすべてレポートだった。

私は「清成ゼミ」には入るのは難しいが、大学で一番好きな先生と講義だった為、所謂ダメもとでゼミの試験を受けた。

58年館の一室でゼミの入会試験は行われた。

  今はない「58年館」

面接が一番重要で、ゼミの先輩やゼミ長と呼ばれるゼミを仕切る先輩が面接官だ。

もう40年前のことで詳細には記憶にないが、

「企業が発展する為にはどのようなことが必要か」

を5分間で話せと言うような内容だったと思う。

私は専門的な話しは出来ないし、またしたとしても薄っぺら話しになると思った。

勉強をはしていない私しだが、だれよりもアルバイトはしていた。

そこで思い切ってアルバイトで学んだ「人」の大切さを述べたような記憶がある。

通常は資本主義経済の中にいるのだから「人材」「金」「資本・もの」「情報」などを絡めて

話すべきだったのだろう。

しかし私は、これまでのアルバイトで出会った「人」の話しをした。

故郷の大きなホテルで働く、和食のT君の話しに時間を割いた。

低賃金、長時間労働に愚痴一つ言わず寡黙でありながら、真摯に仕事に向き合い自立しているT君は

4歳年下だが大人に見えたからだ。

いくら資本金が多くても、大きな工場でも、世界の技術をもっていても、

そこで働く「人」が一番重要だとのことを述べた。

今思えば当たり前のことで、人を説得するような考え方ではない。

12人しか入れないゼミの入会試験には58名の受験者がいたとは後から聞いた。

私はT君の仕事ぶりや夜食を食べた想い出などを話したのだろう。

数人いる面接官は「そんな思いで話しはもういいよ」と言わんばかりだったが

ゼミ長だけは私の拙い話しを熱心に聞いてくれた。

面接が終わり、市ヶ谷の駅から新宿のバイト先へ向かった。

駅までの道のりは江戸城の外堀にあたり、桜が満開だった。

  飯田橋~市ヶ谷の桜並木
  総武線と

ゼミの試験には通るはずはないし「潔く散るか」の心境だった。

その日の焼肉店のバイトの皿洗いはいつもとは違う感じがした。

1週間後がゼミ入会試験の発表だ。

今ならラインで合格、不合格だろうが当時は携帯などないし当然張り紙だった。

市ヶ谷校舎へ行き、合否だけは確かめないといけないと思いゼミ室の張り紙を見た。

えー私の名前が書いてある。合格したらしい。しかしあまりうれしくなかった。

帰ろうとすると、薄暗い廊下の前からゼミ長が来た。

「おめでとう」と1言。少しだけ笑った。

「中小企業論」をもう一度読んでおいた方がいいとだけ言ってゼミ室へ消えた。

桜並木を歩きながら、なんとなく大学生になれた気がした。

市ヶ谷の駅を通り越して、四ッ谷の駅まで歩いた。

「清成ゼミ」では語りつくせないいい経験が出来た。

ゼミの先輩や後輩は一般的に言う、いい企業に就職した。

大企業で要職につき活躍した。

私も故郷で就職して、それなりに働き、生活をして現在に至る。

2年間のゼミだったがいい思い出ばかりだ。

清成ゼミに入れた理由はまた次回書こう。

ゼミ長だけは大企業ではなく、彼らしい会社で貢献することになる。

もう40年前の話しだ。

 

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