長い「夏休み」と「ジャズ」

東京から故郷に帰るにはスカイメートと言う学生専用の制度があり、半額で飛行機に乗れた。

パソコンでの予約などはなく(まだパソコンがなかった)当日のキャンセルや空席がある時だけ使える制度だ。

時間に余裕のある学生は大いに助かった。

飛行機で故郷へ帰る以外の交通手段は列車だ。

寝台列車

東京と鹿児島を結ぶ「寝台列車ブルートレイン」なる列車がいる。

東京を夕方6時に出て次の日の午前中には鹿児島に着く。よく利用した。

二段ベッドにもぐりこみ駅弁を食べる。単行本を読みながら結構楽しい旅だ。

途中で、すれ違う列車の時間待ちをする。まだ複線化になっていなかったのだろう。

朝起きると川内付近だ。川内川を渡り、いよいよ故郷鹿児島の西駅につく。

エスカレーターなどなく線路の上の連絡通路を歩いてあがり、歩いて下がり、改札で駅員さんに切符を渡す。

目の前は桜島、薩摩漬け(中園久太郎商店の看板商品)の看板が迎えてくれる。

それから2カ月長い「夏休み」だ。

試験も終わっているから、まるまる2カ月の自由時間。なんと気持ちいいことだろう。

東京では標準語らしい話し方をしているが、いつものイントネーションで話せる。

しかも幼馴染の同年代の友人が大勢いる。

鹿児島で学生だったり、福岡の大学だったり。

故郷は実に居心地がいい。

夜はリバーサイドと言うジャズ喫茶によく行った。

ジャズ好きの友人は「ジョンコルトレーンはすごい」「ミンガスのベースは腹に響く」などとうんちくを話す。

コルトレーンレコード

私も高円寺のジャズ喫茶に行っていたので、ジャズの本はよく読んだ。

黒人のブルース(友人はブルーズと発音した)は魂に響くなどと言う。ミンガス

ここではボブディランや二ールヤングもかなわない気がした。

私はミシシッピージョンハートが好きでここではジョンハートの話しで対抗した。ジョンハート

ボブディラン

二ールヤングマスターが「トムウエィツ」をかけてくれる。

このだみ声がいいのだ。

トムウエィツ

マスターはジャズが好きでジャズ喫茶をはじめたらしいがそれでは食えず1階では普通の喫茶店も経営していた。

それはそうだろうコーヒー1杯で3時間以上いるのだから。

しかしマスターはいやな顔一つせず学生の話しに付き合ってくれる。

音響機器も鹿児島には2台しかないJBLだ。

ジャズ喫茶をでる時は次の日になっている。

友人の家は歩いて30分ほどかかるところだが

街中が実家の私は「送るよ、と言って友人の家まで歩いた、歩きながら話した」

ひと夏、こんな生活が続く。バイトをして友人と話す。この繰り返しだが飽きない。

その時はこんなことが一番いいように思えた。

そしてまた夏がすぎ、東京での生活が始まる。

東京の高円寺にある、ジャズ喫茶で「トムウエィツ」をリクエストした。

「学生さん、渋いね」と言われる。悪い気はしない。

なんとなく大人になった気がした。

またジャズの本を読みながら、3時間の時間を過ごした。

秋の学園祭が近づいていた。

 

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